オレンジ/こゆり
 
頼りなく緩やかに
指し示した指先から
また、ひとつ
こぼれ落ちる

まるで
時間をかけて浮かび上がる
あぶり絵のよう

そっとのぞき込む君に
また、ひと雫
オレンジを搾る

波紋にはお互い
気付かないふりをして


冷えた絵からは
爽やかな
柑橘系のほのかな香り
もう
絵はがきにすら

宛名ないはがきを
オレンジに滲む海に
そっと浮かべ
静かに見送る

潮の香りと
微かな揺れを残して
また、ひとつ
戻る   Point(3)