春雨の午後 /服部 剛
 
春雨の降る午後 
私は一人傘を差し 
無数の蕾が開き始める 
桜並木の道を往く 

三っつ目の信号を曲がり 
学校に沿う坂を下ると 
傘を差す 
君の母が立っており 
喪服の私は頭を下げて 
自宅への道をついてゆく 


 紫と金の布に覆われた 
 君の骨壷 

 身に着けていた 
 黒皮の財布と指輪 

 写真立てからこちらを見る 
 スーツ姿の君 

 細い湯気の昇る 
 線香の傍らに置いた 
 私の手紙 


座布団に正座して、
瞳を閉じる。 

背後から、 
啜り泣く母の声 


 おやすみのところ 
 ありがとうござい
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