露悪/秋津一二三
とは違う金と手間のかかった整然とした店内。店員も小綺麗な服を着け、恭しいばかりの応対。勝手が違すぎた。
はいございますよ、とウェイトレスが答えたのに男は安堵のため息をつきそうになった。んだばこれを、と男は早口で頼み、ウェイトレスを追い返した。
あのスパゲティーを食べたらとっととここを出よう。あのスパゲティーを食べた幸せだけ考えて湯に浸かり、歯を磨くのはもったいないから明日の朝にして、あのスパゲティーの夢を見ますようにと床に就つこう。
男の前に持ってこられたのは、男の想像以上のスパゲティーだったが、男が外で見たとおりのスパゲティーだった。
まず、男はこれは何かの悪い冗談で
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