春風のうた /服部 剛
 
なぜ僕は今日も 
この手で重たい門を 
開けるのだろう? 

なぜ昨夜の雨のどしゃ降りにも 
水溜りはいくつもの楽しげな波紋を 
広げたのだろう? 

なぜ春を待つ空は 
あんなにも冷たいのに鳶(とんび)は自由に 
羽ばたくのだろう? 

ロダンのふりで頬杖ついても
逆立ちして世界をひっくり返しても 
僕にはさっぱりわからない  

昨夜立て直しておいた 
駐輪場の自転車が 
今朝はもう 
春一番に転がってる 

すずしい顔で通りすぎる僕は 
今日も「?」を懐に隠したまま 
人の間でつくり笑いに引き攣(つ)って 
靴の爪先に力を入れながら 
ぶざまに踏んばってたりする 

携帯電話を握りしめ誰かに答を聞いても 
インターネットを開いてみても 
まったくもってわからない 

あぁ 
見上げた 
空の遠くには 

春一番に弄(もてあそ)ばれた 
いつかの約束みたいな 
白い手紙が 







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