『雨と目』/しめじ
 
に似ているなと思った。しかし、S子の物を盗ったような覚えは全く無かった。

 急に親指を引き抜いて女はこちらを睨んで唇を噛んだ。眼鏡のせいで目元は分からないけれど、怒った時唇を噛む癖はS子に間違いなかった。

「何も知らない」そう言おうとした瞬間S子が涙を流しながら眼鏡を外した。眼鏡の下の素顔を見て私は悲鳴を上げた。涙の源にあるはずの眼球がからっぽで、顔には二つ仄暗い眼窩が覗いていた。

 ああ、と嗚咽を上げてあたふたしていると、押し入れに勢いよく倒れこんでふすまを突き破ってしまった。その拍子に破れたふすまからゴルフボール大の物体が滝のように流れ落ちてきた。よく見るとそれらは全て人間の
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