言語について/右肩良久
 
 伯爵の晩餐会に呼ばれました。長いテーブルには間隔を開けて点灯された燭台が10ほども並んでいます。食事を前にして伯爵が英語でスピーチを始めました。以下はその内容です。
 「今、私が英語でスピーチすることについて、まず我が国民にお許しを頂きたいと思います。外国からのお客様もおおよそ御存知であるとは思いますが、我が国民は因習的に16の階層に分けられております。昔に比べて階層間の上下意識は希薄になっております。しかし階層ごとに未だに言語的差異があることが問題です。よく知られている例をあげれば、みなさんがお持ちの「盃」は第1から第7の階層まではよいのですが、第8階層から下では「バケツ」という意味になって
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