さかな/折釘
 

浮子が音もなく沈む勢いが朝焼けに相応しい
波濤と僥倖が今日の獲物と嘯いた帰宅は
日々つまずく私のなか波紋に拡がった
釣り糸は日々獲物の重さを変えながら
どこにか垂れた沈黙がふくらむ

巻き尺で獲物を調べる少年と保護者の影が
遠巻きに後ずさりシャッターチャンスを構える片親の
漁り漁られる幸せな家庭にこそ相応しい
針はかえしを日々に深く突いて入る
浮子は自ずと撒き餌を遠ざかる

魚は見えてはならない
汚染された血流を泳ぐさかなよ
お前は燦爛としていた
そして動いてもならない
お前は海中の都市の住人なのだから
そっとその身を横たえているばかり

お前を滑る包丁は
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