ハチクロを読んで泣いた理由/イダヅカマコト
 
ハチクロの廉価版が最終巻になり、コンビニに並んでいた。右手の腱を切ったはぐがリハビリをはじめた後、森田がはぐに告白するところまでを読んで、また泣いた。一昨年も同じところで泣いた。今は泣く必要のないはずの場所だった。一昨年の十月、京都へ向う深夜バスの中でマーフィーの法則を読み飛ばし、自分が変化することを恐れないと決めていたからだ。それは初めてハイデガーの存在と自由を読んだときに似ていた。描けなくなることが怖くて泣いたわけでは決してなかった。

結局のところ、一昨年の京都行きで、行きがかりで窪ワタルのイベント、言鳴に参加し、前よりもいくらかいい書き手として東京に戻ってきた。ただ、書けなくなる自分を
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