春の雷を聞きながら/右肩良久
激烈に痙攣する音の舌に舐められて
君の敏感な乳首が動くなんて
信じられない僕は老いさらばえた首で
口を半開きに転がって青い空が
はたまた青くない空が崩れて降っている今、という
神話を甘受するしかないけれど
信じられない
生毛が光ってはそそけ立つ君の真っ白い乳房が
啓蟄、畜生の萌芽に濡れながらうねうね動いて
こんにちわ、という言葉を練り上げようとしている
そんなことは、許せない
瞼のない僕の眼に春雷は音の形の粗い春雷は
「雷」という骨張った連続的命題
ここに兵士は居ませんここに用のないペニスは
ありません泣けてくるほど立つ可愛いペニスは
ないのだから、どうか君よ、臍へかけて蠕動する
白くふっくらとした下腹をすり寄せないでくれ
皿を洗う湯のような熱で僕を流さないでくれ
雲の片隅にあてのない表情を作る閃光に照らされて
いきなり裸の足に湿度の高いチーズを匂わせないでくれ
語らないでくれ黙らないでくれ人とならないでくれ
断裂
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