海馬/山中 烏流
 
 
 
 
 
「思い出すことに
 何も、見いだせないまま
 私は
 その一端を
 囲うようにして
 しまったのだ(、ろうか」
 
 
踵から伸びた
私、らしきもの、の影
それは
背後へと広がったあとで
色褪せるように
口を、つぐむ
 
 煌々と刺さる陽光
 その目線から
 ただ
 逃げるようにして、
 
私は
小さな溜まりへと
解けて、しまう
 
 
例えば
そこは砂浜に似ていて
歩こうとすると
沈むような、余韻だった
 
背面に沿いながら
明滅するものは、
女子高生の声と
夕方の潮風
それから
テールランプの、叫び
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