失われていく題名/秋津一二三
事象なのだ と
ほほえみ
さらばえる
「老人は自然になった」
へだたるものは希薄
わたしを象るひとつ の
向かうのはひとであれ
「皮膚一枚の越境」
気が付けば触れている
首輪の方がなんぼもマシ な
約束の痕跡
「男の指輪」
自在にして自由は孤独と知る
殆どの者が願い
その癖 拒む
「打ち拉がれようない」
海を観 海に中てられた
流し込まれた塩っ気
還ることは適わない
「胸が中る」
トラウマトラウマと言える内は余裕
己のために語ることのない彼ら
仕舞を舞う
「還ってきた人間。 還ってこない人」
奪還だ と彼は叫ぶ
代替だ と私は呟く
奪われた物の
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