『狸と園丁』/しめじ
た日めくりと、
小さなあけびの実だけでした。
園丁は「こうボラばかり降ってはバクでも呼んでこないとな」と嘯くと、
よく熟れた時計盤の7時のところをお玉で掬って、
背負っていた神主の口の中に放り込みました。
つづら折りになった坂道を下って、
園丁は神主を台座に据えて、鋸を持ちます。
いつの間にか空が真っ赤になっていて、
園丁は帰路を急ぎます。
その後ろからそぞろそぞろとねずみ色の男達がやってきて
一斉に線路に飛び込んでいきました。
やがて狸がやってきて真っ赤なカトレアを見つけて喜びました。
枕がまた芽を吹きました。
夢が夜に溶け出して、
雪がゆっくりと降り出したのです。
白い夜に星が凍えているのを見て、
鮭が涙を流したそうです。
翌日の遠雷で、放電したパラソルが川を下って行くのを
スルメイカをほうばる吉田少年が発見したとのことを園丁が聞いたそうです。
その夜、お地蔵さまのクビがからりと落ちました。
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