串焼き/木屋 亞万
右手の石斧で断ったのか。弱らせたのも私の気まぐれ。こんなはずではなかった。陽気な旅に浮かれていただけ。ライオンの骨以外すべてを激情の炎で焼き上げて、約束通り平らげた。
サバンナでは土葬はしないという動物の掟にしたがって、骨は太陽の下に置いておく。
サバンナ吹きすぎる砂煙に、煙避けのサングラスを装着し、涙流しながら歩いた帰り道。煙突避けの安全靴を履いて、骨をカリカリ踏みしめる。蟻地獄から砂漠の底へ潜り、息苦しい砂の海を抜けた。海に出ても変わらず歩き続け、死んで海の藻屑になるならば、それでも構わないなと思った。体中に砂と塩が染み込んで、全身の血潮は汚れ始めた。
私は人間になってしまった。
その日から太陽には串が、誰かの八つ当たりによって、突き刺さることになった。いわゆる電柱というやつが、太陽のとろけそうな核に獅子の血潮を淀みなく注ぐ。
串はそれ以来ずっと焼かれている。
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