キッチンの喉元/船田 仰
 
になる


見当たらないのは信じてしまっているからだ、


ぼくは指輪やピアスでぼくを暗示にかけたまんま
小指の痛くなる靴をはいて
きしむ自転車がゆるやかに描くカーブ
あいしていたいの
だれかの愛する夢がこの喉元にはないということ
憎悪する
すばやくやわらかに支配されゆく饒舌な困惑
ぬくくなったふりをする三月を紡ぐ
したたかなあれとこれ
どのキッチンにもある
ざわめいて定まらない乾き







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