「都」/菊尾
 
ドアの外は暗い暗い霧の都
離した指に巻かれている糸は虚ろ
君がどこかから取り出した小さな鋏
魔法のように集まっていた想いの粒は散らばって

靴紐に足を取られてつまづく
温度差には過敏な反応
紐は結ばずにそのままにしていた
足早に後ろ姿ばかり残すから
後を付いていくだけで並べないまま

固い地面に響く足音
遠くの煙突からため息みたいな白い煙
気付けば霧の中から幾つか人影
みんな歩いてる
縋るように前のめりになりながら
忘れるために歩いてる


人知れず消えていく感情があって
バスがそれだけ運んでくれたらいいのに
君がくれた幻
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