ぼんやりと、僕は想う/はるこ
 


行本の背中に軽く手を振って、僕はまた佐藤の方へと視線を移した。
なーんか、気になるんだよな。 心配だな。
ため息をついた瞬間、メガネをかけていない佐藤と眼が合って驚いた。
いやいや、かけてないんだから見えているはずはないのだろうが、ちょっとどきっとした。

しかし、なぜか佐藤は僕のほうへとやって来、がらりと僕達を隔てていた窓を開けた。

「先生、すみません、ティッシュをお借りすることはできませんか。」
「………あぁ、どうぞ。」
見ると目じりに涙がたまっている。 彼女は取るなりすぐさま鼻をかみ始めた。
僕はその時ようやく合点がいった。

ぼんやりと、僕は想う。
願わくば、君の嫌がるこの季節が早く終わってくれますように、と。
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