乾いた風が/風音
 

 カウ・ボーイがあたしに言った
 
 「忘れ物だよ」
 
 あたしは
 忘れたんじゃない

 わざと置いていったのだ

 もう
 いらないから

 「よかったら
  あげるよ」

 若いカウ・ボーイも年取ったカウ・ボーイも
 みんな振り返った

 「まだまだ使えるぜ」

 「とにかくもういらないの」

 こうやって
 どれほど大切なものを
 あたしは失ってきたのだろう

 ビールの匂いのするその空間で
 あたしは暫く立ち尽くす

 もう、いらないの。

 とにかく
 もう、いらないの。

 愛とか夢とか希望とか
 とりあえずはそこに残して

 あたしは店を出た。

 乾いた風が
 スカートを翻した、
戻る   Point(17)