乾いた風が/風音
カウ・ボーイがあたしに言った
「忘れ物だよ」
あたしは
忘れたんじゃない
わざと置いていったのだ
もう
いらないから
「よかったら
あげるよ」
若いカウ・ボーイも年取ったカウ・ボーイも
みんな振り返った
「まだまだ使えるぜ」
「とにかくもういらないの」
こうやって
どれほど大切なものを
あたしは失ってきたのだろう
ビールの匂いのするその空間で
あたしは暫く立ち尽くす
もう、いらないの。
とにかく
もう、いらないの。
愛とか夢とか希望とか
とりあえずはそこに残して
あたしは店を出た。
乾いた風が
スカートを翻した、
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