言葉の振動/vallette
 
だと思っていた

言葉はそこらじゅうに溢れていた
ドアや窓、引き出しや小さなビンにまで
だから私はありとあらゆる隙間はガムテープでふさいだ
だというのに言葉はマグカップの底にある残ったわずかなコーヒーにさえ映って
私を覗き込んだ


激しい憎悪が沸き起こり力一杯マグカップを壁に投げつけた
粉々にはならなかったものの5つほどのかけらに分かれたそれを見て
私はハッとした


言葉なんてものは初めからなかったのだ
そう、どこにもだ


言葉がなくても感情は存在する

全ての些細なことには名前と言葉があって

同じことなのにみんな違うことをしている

空は変わるのだ 雲の動き一つでも

ゆえに言葉も変わるのだ 私の心ひとつでさえ



私はもう言葉を恐れない
アレはもう私のモノなのだから
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