瀬者の伝言 /
服部 剛
もう何がほしいというでもなく
この手を伸ばしたところで
ただ風の音が吹き過ぎるばかりです
( 飢えた狼の輪郭は透けて・・・ )
「ここは、なんにもない場所です」
そう呟いて落とした目線に見えたのは
何処かへ歩きたそうな左右の足
公園まで歩いて
腰かけたベンチで本を開く
余白のページの挿絵には
顔の溶けた瀬病の男
虚ろな目線でみつめるぼくに
一本だけ残された
爪の無い親指を立てる
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