ノート「序か跋か」より、みっつ。/秋津一二三
 


「ないわけじゃないと思う。お前の定義とあってるかは分からんけど」
 彼はたっぷりと時間を、あたしの質問の意図と気持ちを考えるのにかけて、答えた。なんだってそんなことを聞くんだ、と言葉の後に続いてる空気。
「あたしは、そういう恋をしたことがある」
 唐突だな、いや前振りはあったか。と、彼は苦笑する。
「相手に、いや誰にもか、知られず知らせず、勝手に好きになって勝手に終わらせる。良いんだか悪いんだか分からんな」
 そうだね、まったくそうだ。と、あたしも苦笑する。お約束のように。
「終わった時点で、いや終わらせた時点でたぶん、相手のことはどうでもいいんだ。恋自体は終わ
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