屋上/結城 森士
一人でウォークマンを鳴らす。
賑やかな教室から逃げる。ウォークマンを引っ掴んで。
休み時間になると決まって屋上に忍び込み、赤錆びでザラついた柵の
隣に捨てられた小汚いパイプ椅子に座り、ウォークマンを鳴らす。
離された点と太陽の点を結ぶ線を探して、
リズムに合わせて足踏みをして、
足を踏み外して柵にぶつかって、
椅子から転げ落ちそうになる自分を笑ったり、
笑ったりする自分を嫌ったり、
そういう自意識過剰なことを、
恥じたり、冷静を装ったり、
また恥じたり、一人で、
ウォークマンを鳴らしているだけなのに。
弁当の余り物の檸檬を摘まんで、
瞼の片隅に潜んでいた涙を搾り
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