サークル/鈴木
が貫きました。中空にさまよっていた、彼女の目が、はっきりと、軟骨の向こう側、一個の不在を見据えたのです。そして先の謎めいた呟きが明瞭な発音によって「ぶっ殺す」と再現されました。
「馬場芳久ぶっ殺す。私を捨てるとは大罪だ」
我々の所属するサークル、記憶会について確認しておきましょう。大学非公認、五年前に幹事・渋谷俊樹、副幹事・大久保隼人、会計・神楽坂愛美の三名で結成され、今や総勢十五名の鯨飲者が集うカストリ・コミュニティであります。趣旨はずばり記憶そのもの、各々自由に物を覚え月に一度の発表会にておのが透徹知悉を披歴、後に何もかもを忘却へ追いやらんばかりにひたすら酒を摂取するのです。その惨憺たる
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