name of pain/衿野果歩
掠れてゆく記憶から
立ち上る陽炎
痛みだけが今もあせずに
あの恋の結末を主張し続ける
いやでいやで仕方のなかったはずの
あれやこれやは影もなく
楽しかったことの輪郭だけが
ゆらゆらと誘う
記憶は底に沈まない
水面から消えたとしても
覗き込めば向こうから手を伸ばし
捕まえて放さない
痛みだけが今も
あれは過去だと繰り返す
何度も
何度も
何度も何度も
その正体に気づけぬままに
新しい痛みを増やしてきた
もう泣かないように 名づけよう
この痛みは後悔だ
正体がわかれば もう恐くない
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