もーりさん /服部 剛
 
とぼけてしまった
お風呂上りのもーり爺さんを 
いたずら好きなNさんが抱きかかえ 
こころやさしいIさんがオムツをあて 
ぼ〜っとしてるぼくが後ろから車椅子を入れる 

車椅子に腰を下ろした 
もーりさんが「あ、いたい!」とけなげに叫び
Nさんは「誰にあいたいの?」にんまりたずね
もーりさんは「 むすまっ(娘妻)! 」と迷わず答え 
ぼくらは思わずずっこける 

次から次へと 
車椅子の老人が運ばれる 
忙しい入浴介助の最中(さなか) 

すっとんきょうな一言に 
もーりさんを囲むぼくらの 
緊張の糸がほぐれる 

それぞれが 
次の仕事に移り 
もーりさんの車椅子を押すぼくが 
風呂場の出口の戸を開いた 
去り際  
もーりさんの口も開いた



  は は は 




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