遺影の君へ /服部 剛
昨夜からの強風で
停まってしまったモノレールの車両が
ホームを離れた線路の下に
ぶら下がっている
一月前、自ら途中下車した
君の人生のように
骨壷の前に坐り
遺影の君と目を合わせたくて
自宅に行く予定だったが
「妹が受験前なので・・・」と
受話器越しに俯く母に断られた
日曜日の午後
天井のスピーカーから流れる
ヴァイオリンの音が
宙に浮いたぼくのこころを慰める
喫茶店で目を閉じて
思い浮かべた遺影の君に
残された地上の旅を
歩み続ける決意を祈る
窓の遠くに見える
ぶら下がったままの車両と
暗い車窓から目を背け
ティーカップの耳に
指をかける
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