窓拭き/生田
ぽこぽこ。と気泡が浮いていく雨の日の窓拭き。はいつまでも終わらない雑巾がけに苛々して爪先で突いたガラス。に途端現れた大きな目玉に窓拭きは睨まれ。窒息。するかわりに、するする。と咽元につっかえた釣り糸を伸ばした。海溝まで潜れもしないくせにそういうところだけは一丁前な。窓拭き。の上では水温計が沸騰しそうに笑っている。畜生この野郎。とのたまった窓拭きの咽から釣り糸と釣り針と天使の羽の疑似餌が、ぼこり。と咽から抜けたから墜落死体は嫌だな、と走馬灯が百人の天使よろしく窓拭きを取り巻く、なんと雲間から光。これでやっと仕事が進むと窓拭き。羽をせかせかと動かし雑巾をかける。けれど飛ぶのなんて初体験ときたもんだ。
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