石の顔 /服部 剛
 
今日は
自分であることが 
うれしかった 

ぼくを囲むお年寄りの 
無数の瞳をうけとるように 
語らうことができたから 

今日は 
自分であることに 
じっと耐えた 

ぼくと働く同僚の 
些細な言葉に傷ついたまま 
なにも言えなかったから 

優しさと怒りの間でいつも 
ふんばっているぼくは 
やがて表情の消えた 
一つの石になる 




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