ひかりの夜道 /
服部 剛
仕事帰りの人波に紛れ
手を繋いだ老夫婦が
通りすぎていった
耳に入れたイヤフォンから
「ベル」という唄を聞くと思い出す
もう会うことも無い
いつかの君の猫なで声
少し離れた空の下
「ただいま」
「おかえりなさい」
受話器越しに交わした夜
( 老夫婦のうしろ姿が
( 吸いこまれた
( 人波の向こうに
( いつまでも消えない
( ふたりの繋いだ手
路地裏に入ると
まばらにうつむく街灯の下
淡いひかりの夜道
暗闇にのびる
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