留守番時間      /服部 剛
 
本屋の夫婦が 
休日の買い物に行ってる間 
店内の椅子に腰かけて
ストーブの火がゆれる窓に 
開いた両手を揃える 

昨夜の朗読会で 
ギターを置き忘れた雲流さんが 
こんこん と叩いたので 

ドアを開けた 

「僕は中学の頃友達を亡くし 
 学校の授業よりも本当のことを知りたい 
 と思い、唄い始めたんだ       」 

「きみははたらくために 
 うまれてきたんじゃない」 

最後にひとこと言い残し 
ギターケースを背負い 
店を出た 

マルテーブルの上には 
池田晶子の 
「人生のほんとう」 

生きることは 
くだらないのか
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