バカの天才/あすくれかおす
ちいちゃい頃のぼくらは、バカの天才ばっかりだった。
プールに思い切り飛び込んで、みんなを見下ろすほどブランコをこいで。
工事現場のトタン屋根を、危うげにいくつも飛び越えて。
大人には見えない場所から、山ぎわの夕日を眺めた。
初めてその場所にたどり着いた日。
バカの天才たちが、一同静かになったのを覚えてる。
あの日の夕空からは、なんかスモークチーズみたいな匂いがしたな。
ぼくらは色んな味を知っていた。
「のし梅さん」の味。
鉛筆の芯の味。
体操帽子のゴムの味。
別にうまくなく
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