福豆/かのこ
を買った。
夜の10時過ぎ、お母さんが仕事から帰ってきて、ベランダに出て一緒に豆まきをした。
昔は兄妹で豆を投げ合ったな。そんなことを思い出しながら、静かに控え目に投げた。
「ふくはーうちー、ふくはーうちー」
「おにはーそとー、って言わへんの?」
「ふくはうちだけでええねん」
「なんで?」
「なんでかは知らんけど、どっかの寺じゃそうしてるらしいやん。」
「ふうん。」
「豆は歳の数だけ食べるんやっけ?」
「数え年でね」
「うちは20個か。きりがええな。昔はいっぱい食べたくても7個や9個しか食べれんかったのに」
「いちばん食べたい年頃にそんだけしか食べれんのやね。おかん
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