球体がある/パンの愛人
 
 アンリ・ミショーに「Aの肖像」という散文詩がある。以下、恣意的かつ部分的に抜粋する。

 青年期の入口に達するまで、彼は一つの球体を構築していた。密封され、充足した球体。稠密な、彼一人のための、混沌とした一つの宇宙。両親も、愛情も、いかなる物体も、それらの影像も実体も、彼の意思に反して強引にそれを利用するためでなければ、何一つ中に入って行こうとはしなかった。実際、彼は憎まれ、あんな奴は決して大人になれないだろうと言われていた。
 彼は多分聖者たるべく運命づけられていたのだった。

 アンリ・ミショー全集?の解説で訳者小海永二はこの詩を「ミショーの詩的自伝といってよい重要な作品で、
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