ポケットにひと粒の種を/服部 剛
 
の鈍い音で
僕と天上の間を通過してゆくんだ

(戦闘機は
 時折僕の胸からも飛び出しては衝突し
 また僕の胸に墜落してきたりする)

言葉はいつだって 口から放たれた瞬間
空気の振動で形を変えて
君の胸に 届いて しまった

もう一度
手紙は書き直したほうがよさそうだ
白紙にしぼり落としたインクの本音を
大事な人には
ちゃんと伝えられる人でありますように

君の隣で「ニコッ」としているだけで
ゆるしあえる空間に
やがては辿り着けますように

悪口の戦闘機の群が
休憩室のふすまの隙間から出ていったら
僕はゆっくりと身を起こし
再び 人々の間に入ってゆきたい

(ズボンのポケットに
   微笑みの種をひと粒握り)

騒がしい日常の渦に
愚かしい自分を静かに沈めて
一輪の笑顔を咲かせたい

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