ポケットにひと粒の種を/服部 剛
の鈍い音で
僕と天上の間を通過してゆくんだ
(戦闘機は
時折僕の胸からも飛び出しては衝突し
また僕の胸に墜落してきたりする)
言葉はいつだって 口から放たれた瞬間
空気の振動で形を変えて
君の胸に 届いて しまった
もう一度
手紙は書き直したほうがよさそうだ
白紙にしぼり落としたインクの本音を
大事な人には
ちゃんと伝えられる人でありますように
君の隣で「ニコッ」としているだけで
ゆるしあえる空間に
やがては辿り着けますように
悪口の戦闘機の群が
休憩室のふすまの隙間から出ていったら
僕はゆっくりと身を起こし
再び 人々の間に入ってゆきたい
(ズボンのポケットに
微笑みの種をひと粒握り)
騒がしい日常の渦に
愚かしい自分を静かに沈めて
一輪の笑顔を咲かせたい
戻る 編 削 Point(7)