批評祭参加作品■回り道、つぶやく。 ??五十嵐倫子『空に咲く』について/岡部淳太郎
 
 2つ買う/家に帰ってからチンして食べることにして」という詩行などは、心の動きを描く際の手つきが実に決まっている感じがする。また、その前後の「下へ/下へ 下へ 下へ」「外へ/外へ 外へ 外へ」というのは、心の動きを視覚化したような詩行だ。
 この後につづく詩行をもう少し引用してみよう。語り手はショッピングセンターを出た後、「公園へと渡る橋の上で」ひとりの男と出会う。


{引用=ふと隣を見ると 男が立っていた
私を見下ろしている瞳と出会う
あぁ 好きな顔だな。
目が離せなくて
「たいやきを一緒に食べませんか?」
「・・・・・」
「しっぽの先まであんが入っているんです」
差し出
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