「溺れる心音」/菊尾
「愛されたい」と
傍で吐息混じりに呟いた
僕たちの均衡は
愛情が濃くなればなる程に
一つずつ剥がれていく
変化する形状に怯えるが
壊れたらまた創ればいいと簡単に君は言う
会う度に二人の形は剥がれ落ちて
粒子状になって吹き飛ばされてしまうような感覚
再構築は難しいのに
それを言い出せないままでいる
求めるのは怖いから
手の甲を頬に当てる
冷たい僕の手で君は少し震える
乳房を含めば背中を爪が伝う
首を絞めれば笑いながら絞め返す
開いたり閉じたり腫れたり滲んだり
君は包むように
僕は塞ぐように
窓を流れる雨の影が体に重なる
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