「何巡目かの夜」/菊尾
 
区切るために未完成で終わらせる
結論の先でも何かに悩む
明日は今日よりきっと怖いから
眠ることにも怯えてる

鮮明な顔に湿度のある物言い
話すことが得意でないと数分前に言っていた
周りが気に入る事ばかりする
誰かが居なければ動けないと
何度か聞いた言葉が耳に入り込む

君の影が沈んで行く
桟橋の隙間から流れ落ちていく

知らなくていい事しか残せずに
胸から感情が漏れていく
移ろって見慣れない足が過ぎていく
風化する事象は食い止められず
以前の口調が思い出せずにいる


僕の言葉
君の言葉
互いが互いを代弁していた
近すぎて曖昧になる輪郭に甘えた
指でなぞり合う戯れの中
見失うことだけ上手になっていた

細かい肌が震えている
崩れそうになる瞬間に何度も立ち会った
しがみつく腕を痛みが伴うほどに強く握る
何巡目かの夜
剥ぎあう僕らの仕方のない夜

戻る   Point(0)