良寛ノ庵 /服部 剛
 
山間を走る電車に乗り 
開いた本のなかにいる 
良寛さんの
寂しい嘆きを聞いていた 

車窓に流れる 
杉林の暗闇に 
一ヶ所仄かな日溜りがあり 
一軒の襤褸い庵に 
良寛さんのまぼろしが 
破れた衣を身に纏い 
独り坐っていた 

本を閉じると 
良寛さんの頬が
ほころびそうな
子供が一人 
通路の風になって 
駆け抜けた 




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