紅ノ羽  /服部 剛
 
わたしの心の暗闇に 
張り巡らされた蜘蛛の巣は 
寂しい一つの宇宙を広げ
いつも小鳥を待っている 

幾羽ものはばたきは 
見向きもせずに 
薫りだけを残して 
網の目を通り過ぎた 

時折紅ノ羽が掛かり 
蜘蛛の巣に包み込まれた 
恍惚の小鳥は瞳を閉じ
炎に捩れ身を熔かす 

蜘蛛の巣を広げると 
燃え尽きた宇宙に誰の姿も無く 
夜風にたゆたう網目の下に 
炎の幻が堕ちていた 




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