降る/縞田みやぎ
 
おたがいの領域であるから
わたしは苦笑いをとどめて
着替えが先であるよ と
彼をしからねばならない

日がさして
窓に面した校庭に
高等部の生徒が
そろいの体操服でならぶ

両の足で立って
生きるようになるのだろうか
じゅうたんの上に寝そべり
手足をふりまわして泣く彼
ぼんやりと おもう
あの棚にも手が届き
わたしなぞ尻目に
晴れやかに笑うのだろうか

どれだけの日々が降るのだろう
おだやかにわらう子らが
にぎりしめたこぶしを
ぼんやりと
おもう

しからねばならない

十数分を泣きわめき
脱衣かごに手をのばした彼の
髪をかるく撫ぜ

今朝の背中を教室のすみに
少しだけ
座らせておく
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