降る/縞田みやぎ
 
隣の学級ではもう
朝の会が始まったらしいが
今朝の彼は
いっぱいにしかめた顔で
着替えをこばむのだ

棚の上
きのう買ってきた
新しいおもちゃ
電子音のにぎやかな を
かくし忘れていた
うかつな担任だった
車椅子を降りてすぐに
彼が声をはりあげ
ああなんてよろこびだろう
しまった
とは
思ったのだが

もう水ぎわな声で
わたしの袖を引く彼を
しからねばならない

教師たちが廊下を通り過ぎていく
彼の声はもちろん
窓の外まで聞こえている
言葉をもたない彼が
耳をふさいで
わたしを指さしている
ひどく濁音がまじる
見ないふりで行くのは
おた
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