夜の始まり/川口 掌
 

黄昏時
電信柱の影に蹲る夜を見つけた
勇気や希望 妬みや嫉み 不安や絶望
そんな物達
を飲み過ぎて気分が悪いらしい
大丈夫?
そう言いながら
背中を擦ってやると
出るわ出るわ 夜が抱えている
何やら得体の知れない物が
次から次へと迸り溢れ出した



寂れた漁村の片隅
少年達が屯する
彼方に海と混ざり合う
雲を目指し駆け抜ける
停滞した時間を飛び越し
輝く憧れと言う都会を目指し
それが父の通った
定めとも知らず

遥か谷間の
窓も破れた廃校の
遺された机の落書き
相合傘のイニシャルに被さる
深く深く刻まれるバツ印
描かれる深遠の
落ちる
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