風邪/風音
なんだかゾクゾクする。
身体中の関節が痛い。
熱があるんじゃないんだろうか。
もちろんあるに決まってる。
鼻は詰まるし
喉が痛い。
咳が止まらず
食欲も失せる。
彼は医者に行くかもしれず
行かないかもしれない。
病院の薬をきちんきちんと飲むかもしれないし
市販薬を飲むかもしれない。
あるいは全く飲まないかも。
ねえ君、暖めておくれよ。
そんな陳腐な言葉を想像する。
相手なんて誰でもいい。
風邪が長引くにつれて
彼の心は荒んでくる。
じくじくと
果てしなく治らないように思えてくる。まるで世界の終わりのように。
あんなに元気だった彼の
輪郭が少しづつぼやけてくる。
少しづつ萎んで
まるで小さなネズミのようだ。
いいじゃないか、
ただの風邪なんだよ。
得体の知れない熱病でもあるまい。
だから
この機会に
過去でも振り返ってみようか。
それとも未来を。
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