蟻塚の街 /服部 剛
 
終電を逃がし泊まった 
ネットカフェのリクライニングで 
寝てる間にポケットからこぼれた 
腕時計を失くしたらしい 

僕等は今日も 
密かに刻む秒針の音に支配され 
忙しなく一日は過ぎる 

ほんとうは 
時計など
いらないのかもしれない 

流れる人波の間に立ち止まり 
見上げる時間(とき)の無い 空 

  ほら 

明日を煩うことなく 
鳥達は 
自由の翼を広げる 

今日も時計仕掛けに動く街で 
地に影を伸ばす 
僧侶等の俯(うつむ)き

音の無い行進は散らばり 
それぞれの 
蟻塚に吸い込まれる 




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