「三瀬川」/菊尾
 
空色が渦巻いている
ぬくもりは見知らぬ場所から訪れて
迷子になった今でも辿ることが出来ている

日々は名残惜しさで溢れていて
繋げない肌と肌に
湿度を奪われそうになっていた
誤魔化しながら
足跡は付いたり、付かなかったりで


内緒にした事は誰にも洩らさずに
あっちまで連れて行くよ


見覚えるのある人影がひらひら揺れていて
小舟には仰向けで果てない天井を眺めながら
遠い昔に聞いた川を渡っていく

対岸の懐かしい人
振り返る特定の期間
未発達な心
美化するには余りに足らない


愛してくれた?

そんな事
もう、どちらでもいいね

ただ、在り続けた
視線は交わり続けた
気持ちは通い続けた

十分過ぎるぐらいの事だよ


ねぇ?


ねぇ

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