民芸茶屋 〜明日香村にて〜 /服部 剛
 
たくさんの大黒さま 
観音さまのほほえむ 
明日香の村の茶屋で 
冷えた畳に正座する  

真ん中の凹みに 
釜の入った机で 
今こうして 
ノートをひろげ 
旅の思いを綴る 

「 なんだか不思議な茶屋ですねぇ・・・ 」 

「 ここは憩いの場所なんや 」 

茶屋のおじさん 
それだけ言って 
何処かへ消えた 

この部屋の外で 
さっき座った椅子は 
少し傾いたままにしておこう 

鎌倉から遥々流離(さすら)う 
名も無き旅人が 
ここにいた密かな証として 

( 窓から外れて立つ 
( 曇りガラスに映る 
( わたしの足は 
( 次の場所へ過行(すぎゆ)く  







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