開運の輪 〜京都にて〜 /服部 剛
 
「 この茅の輪を
  八の字に回ってくぐると 
  一年の穢れを清め 
  開運を招きます     」 

大晦日の朝  
京都駅の地下道で  
八の字眉毛で真剣に 
白看板の説明書きを 
身をかがめて読む 


  ばたん! 


友達とふたり並び 
藁(わら)の輪をくぐった 
女の子のひとりが 
こけていた 

吹き出しながら 
よれよれ
縮んで小走るふたりに 
思わずぼくは走り寄り 

「 あなたきっと 
  来年いい年に 
  なりますなぁ 」 

「 えぇ・・・ 
  そうですね、 
  そうですよネ・・・ 」 

女の子は
赤らむ顔で  
軽く会釈し 

隣の友達は 
笑いを堪(こら)えつつ 
顔をそっぽに向け 

ふたりは 
靴音立てて 
駆けてった 



 
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