「近付く」/菊尾
 
階段を上る足音は
後からわたしを追い越して行った
想像以上の現実感
ある日、空に見た一つのひずみ
わたしはそこへ近付こうと
高みを探した

見下ろせば
オウトツの街、色彩豊かな広場
馴染むことのできないわたしは
どこに居たって薄い影を引きずって
ねぇ
何色を羽織っても何色にもなれないね

甘さ控えめの妄想で暮らしたのは
現実から遠ざからないようにした唯一の手段
不器用すぎて適応の仕方を知らないだけ
染まらず染められず誰も見えなくなっただけ


それはいつもの日常だった
何も変わらない毎日の一部だった
それがいつの間に?
[次のページ]
戻る   Point(3)