啼くことの霞み/鴫澤初音
 
  リキュールゼリーを食べて 酔ってしまった夜
  蛍光灯の下で 瞬いていたのは自分の目蓋だった

  ローソクを一本 皿の上に置いてみる
  横にあるフォークとナイフ 銀食器の光り

  手にとると冷たく 銀に指からの熱が伝わって
  曇っていく

  僕らは、


   








 

   呼吸するのを止めたかったんだ
   蛍光灯の下で 曇っていくフォークとナイフを

   散ばったテーブルの向うに投げつける
   白い紙が舞い上がって 落ちる

   黒い眼の下で 僕らは見つめあっては
   開いた眼をゆっくりと 閉じて

   霞んでいく僕らを 慰めては
   微笑みあったんだ 
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