「ペイン」/菊尾
 
淡く澄んだ飴玉みたいに
いつかは溶けて一部になるよ
まどろむ夢と夜の狭間で
在りもしない声に酔いしれていた

君が渡したモノクロームの空想
僕は絵の具でそれに色付けて
羊が騒ぐ流浪の森は
場所に依存する事を止めた


壁に描く
紫陽花の線画
軸の人
四月が静止した


梟が鳴いて夜露が足を濡らす
雨が壊れた鍵盤を鳴らし始める
勿忘草を取りに僕は走っている
君の耳にはいつかの歌が響いて


点滅の照明
顔の輪郭
「まだ行けない」
君が零した


どこかの絵本に答えが描いてあると
見知らぬ老人は
見知らぬ言葉で言っていた
僕らはあれから
絵本の在り処を探している

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