「居候」/菊尾
浴室ではシャワーが降りしきっていて
その音が続く中
僕は見失った事を自覚する
正面の壁を眺めていた
髪の先から雫が落ちる
蝕まれていく今を
蟻が何処かへ運べばいいのに
容易く投げ捨てられる
気だるい素振り
僕には握力が無く
稚魚のような君を逃していくのです
望めないから空回り
進めないから立ち止まり
刺激がないから味がしない
水も喉を通らない
投げかけたって問いかけたって
ハマらない互いの形に焦りしか浮びません
交感神経が疼くから君の匂いを下敷きにして治めれば
何も要らないって幻想が騒ぎだす
いつから静かになるんだろう
ゆっくり休みたいだけなのに
行く末を見失ったのは僕だけで
君は今日も知らん顔
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